。。2004年3月3日  そもそも決意ってのは生半可な意志で口に出すもんじゃないだろう?

 
 
「他人に教えなきゃいけないくらいなら、やめる」 
彼からこの言葉を聞いたとき、幼いながらも適わないと思った。

他人に教えないと食っていけないようなら、音楽で食べていくのをあきらめると言うのだ。
彼は決して、自己追求に溺れているのではない。
人に教えるのが下手なわけでもなく、まして嫌いなわけでもない。
この意思表示はとてつもない決意表明の表れだ。


自分がタクトを振り、ピアノを弾く仕事だけで食べていこうというのだ。
恐ろしいね。これがどれだけ大変なことかお判りいただけるだろうか。
音楽家の仕事は不定期。特にクラシック界は当たらない。
それゆえ収入も不安定。時に収入ゼロの月があるってのは珍しい話ではない。
この「収入ゼロ」を免れるためにって理由で音楽講師を兼ねる人は多い。
正しい選択肢だろう。実際生活する上で特に。
音楽での仕事はいくらでもある。インストラクターを含めれば。
インストラクターになれば、いくらか収入は安定する。弟子から月謝をとれるのだ。
人に教えるため意志を持って先生になるなら大賛成。嫌々教えるのは、教えて頂く身として大ブーイングだろ。
近年後者が急増中だ。ガッコの先生にしろ予備校講師にしろ同じ。
しょうがないじゃん仕事ないんだしー、でなっちゃう人がいるんだなこれが。
嫌なのに音楽の先生になっちゃって、結局やめてった人もいる。
中途半端に先生やるな!
(幸い私は先生運がいいらしく「ナイスな師」に多く恵まれたが、)後者に当たった人は、お逃げなさい。

彼は他人に教えるには十分な力をもっていた。
持ちながら、「俺にその選択肢はない」と言い放ち、仕送りを断った。(ついでに音沙汰もなくなった)
そんなハングリー精神で23区のどこかで奮闘している。
そして見事に、メディアで取りあげられるほどではないが、一人前に収入を得る音楽家になった。


「俺は人に教えない」
そうは言っても、一日中スコアとにらめっこしてることもある彼に、人に教える余裕はそもそもない。
晩年になって軌道に乗ったら、きっと弟子を採るだろう。
あんなに厳しいことを言い出したのは、それぐらいの決意で夢に望みたかったからだろう。今でも見事に貫いている。
逆を言えば、これに匹敵するぐらいの決意がなければ成功は見えないんじゃないか。
よほどとんとん拍子に成功すれば別だが。少なくとも彼は、そのタイプの人間ではなかった。
大志がなければなにをもなさない。
もう、背水の陣を敷いただけでは甘い。
さらに、どこかに隠してある船さえ燃やしてしまわないと。


話が早く進んで、若くして成功する人もいるが、彼はどうやらそうじゃない。きっと大器晩成型だ。
向かい風で全力投球している。
それはいつか、追い風になるだろう。  


  

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